Shonan iPark Science Cafe

響き合え、科学。










湘南アイパークサイエンスカフェ

響合え、科学

Plants in Shonan iPark Forest and Waka Poem, Violets

左、比叡山に掲げられた慈円の歌では、比叡山が日本一の山である、と詠まれています。中、比叡山延暦寺、横川の根本如法塔。新緑が美しい。右、湘南アイパークのスミレ。

今回、紹介させていただく湘南アイパークの植物は、スミレ。

森の中ではないのですが、東側駐車場のアスファルトの隙間に、スミレの健気な姿を見つけました。

このようにスミレが隙間によく咲いているのは、アリが種をそこに運ぶからなのだそうです。スミレの種子にはエライオソームと呼ばれる甘い物質がついており、アリは巣に持ち帰って舐めます。甘くなくなると、せっせと巣の外まで捨てに行くのですが、アリの巣はアスファルトの隙間に造ることも多いので、隙間にびっしり咲くことも多いのだそうです。

慈円(慈鎮和尚とも。1155年~1225年)のスミレの歌を紹介したいと思います。慈円は、鎌倉幕府が始まった1192年に比叡山延暦寺トップの天台座主に就任し、その後、合わせて4度も座主を務めた高僧です。スミレが「心澄み」の掛詞として読み込まれています。穏やかに、澄みわたった歌です。

数ならで荒れゆく宿に独り居て 心すみれの花をみるかな(拾玉集 二五八〇)

(現代語訳 数える価値もない、とるに足りない私は、荒れてゆく宿に独り居て、心澄ませている。スミレの花を眺めながら)

 

これとは対照的な、若き日の慈円の気概が綴られた、小倉百人一首の九十五番目の歌も紹介させてください。

おほけなく浮世の民におほふかな わがたつ杣にすみぞめの袖(前大僧正慈円

(現代語訳 身の程もわきまえず思うのだが、辛いこの世を生きる人々を覆ってあげたいものだ。比叡山の山に住みはじめたばかりのこの墨染めの袖を)

 

ライフサイエンスの研究者として駆け出したばかりのあの頃の、不治の病のなぞを明らかにして患者様へ薬を届けたい、という忘れてはならない初心に相通じるものが感じられて、好きな歌です。